The Obedient Feelings 1                                           outside      雨のち晴れ





「好きって言う気持ちは、相手のことを忘れるまで続くんだよ、知ってた?」





本心から言った言葉。
そして、今も気持ちは変わらないと思っている―……



東京都渋谷区、道玄坂。
道玄坂の一角にあるビルの2階にSPRはある。
そこでバイトをしている調査員、谷山麻衣は本の整理をしていた。
安原はパソコンにデータ入力をし、リンは部屋に篭っている。
と、その時所長室が開いた。
若干十代にして所長である渋谷一也、通称ナルが現れたのである。

「麻衣、お茶」

いつもどおり、ドアを開けて麻衣に言うナル。
「はいはい。何がいいの?」
「何でもいい」
そう言って、ナルはまた所長室に戻った。
まったくもぅ〜とぼやきながら、麻衣は給湯室に行く。

しばらくすると麻衣が紅茶をいれて、所長室のドアをノックした。

「失礼しまーす。ナル、淹れたよ」

そう言うと、麻衣は所長室へと入っていった。

「ナル?ここに置いておくね」

麻衣の存在を気にしないかの如く、いつもどおり本を読みふけるナル。
麻衣がそう言って、カップを置く。
戻ろうと回れ右をしたところで、ナルに呼び止められた。

「麻衣」

「ん?何?」

ナルは立ち上がり麻衣の方に歩いてきた。
そうして麻衣の手を取った。

「どうした?この手」

麻衣の右手の人差し指から少し血が出ていた。

「あ、さっきちょっとやっちゃったの。舐めときゃ治るから大丈夫だって」

へらへら笑いながら麻衣が言う。
と、次の瞬間麻衣は思いっきり固まった。
ナルが麻衣の手を掴み、傷口をぺろりと舐めたのだ。

「な、ナル…??」

麻衣の顔は一気にゆでたこ状態になった。
鼓動がどんどん早くなる。

「消毒だけはしとけ」

しれっとした顔で言うと、ナルは麻衣の手を離した。

「う、うん。じゃあ、あとでカップ取りに来るね」

そう言うと麻衣はあわてて所長室を出た。
真っ赤な顔をして出てきた麻衣の姿に、安原は呼び止めた。

「谷山さん?どうしました??」
「………」

麻衣は返事をしない。上の空だった。

「谷山さん?」
「…は、はいっ!どうしたの?安原さん」
「いえ。あ、私もお茶をもらえますか?」
にっこりと安原が笑顔を向けると、麻衣は「はい!」といって給湯室に走っていった。


顔を真っ赤にした麻衣は、給湯室でさっきの出来事を思い出した。
ドキドキと早くなる鼓動。
ナルの行動に驚いた。
普段ならあんなことしない。
絶対にするはずがない。

……ナル?

――どうしてあんなことしたの?


……私、どうしたらいいかわかんないじゃないかぁ。



これじゃあ、まるで私…私……





……ジーンに会いたいよ……






シュンシュンと鳴るやかんを見つめ、その場に立ち尽くしていた。

「…ナルのバカ……」

その一言がただ頭の中で回っていた。



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